助走期間ブログ
現在“助走期間”なフジキの日々を報告いたします。
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登録日時: Apr 3 2009
iTunes Store登録アプリが25,000点を超えてレッド・オーシャン化(=競争激化)している。そうした環境下で突出して話題になっているアプリの1つに辞書アプリ「大辞林」がある。何故“辞書”が?という点を週刊ダイアモンドが記事「究極の枯れコンテンツ「辞書ソフト」の大ヒットが、iPhoneの可能性を広げた!」で取り上げている。それで何故辞書か?そして何故「広辞苑」ではなく「大辞林」か?そこの鍵の1つがユーザー・エクスペリエンスだと考えている。
1-a. どのくらいヒットしたのか?: 詳しくはダイアモンド・オンライン記事を参照してほしいが、大辞林は価格2,500円とiPhone用アプリとしては高額な部類にも関わらず、販売数が25,000を超えているというヒットぶり。ちなみに価格1万円代のパッケージ販売のアプリでは10,000以上がヒットと一般に言われている。もちろん海外製ゲーム等で大辞林より売れているiPhoneアプリはあるが、それほど母数が多く無い(一説には40万台以下の)日本国内市場規模では極めて異例。そして勿論、私も実際に愛用している。
1-b. エクスペリエンスが差別化を実現する: この大辞林のヒットを支えたのは、同アプリの徹底したユーザー・エクスペリエンス。iTunes Storeでユーザーレビューを読んでも、辞書なのに何時間でも使っていられる
とか、辞書がこんなに面白いものだったとは
、果ては電子辞書の再発明、電子出版の新しいカタチ
とまで評価されている。インデックス・グリッドで表示される様々な単語を辿ってある単語の意味を調べ、その説明文にある別の単語をなぞってその意味を調べる…それが続く…という“言葉の海”に潜るアプリケーション「体験」、言葉によるエンターテインメント「体験」は語彙貧困な私では言語化しにくい。
よくユーザー・エクスペリエンスというと、見た目がキレイな事、そしてユーザビリティを考えたユーザーインターフェースに視点が行く。そうした部分に留まらず「ソフトウエア」全体としてどれだけ特別な“体験”をさせるか?というエクスペリエンスの部分まで考えてソフトを開発することはまだまだ稀なケースだろう。いわゆる – ベースとなる「技術・機能仕様/要求定義」があって、その上にUIを被せる – のでは無く、ソフトウエア仕様から、企画段階から「ユーザーにどのような体験をしていただくか?」を真剣に考えないと実現できないものだ。そして大辞林はこの点に注力し、ヒットという結果になった。
2. iPhoneユーザーのエクスペリエンス指向(市場性): iPhoneを手に入れようとするユーザーは元々ユーザー・エクスペリエンスに対して非常に敏感な層が多い。iPhone自身が「機能」1つ1つを取れば、他の携帯とそれほど大きく乖離しているわけでは無いが、その使い勝手、マルチタッチによる革新的な操作性、デザインの良さ…こういった「体験」を評価している理由でiPhoneを手に入れている。特に、アーリーアダプターと言われる初期のユーザーはこの部分について非常に敏感だ。
従って単に「機能」を満たす、満たせればそれで良い…という従来のアプローチを取っている場合、ビッグブランドであってもiPhoneユーザーにそっぽを向かれる場合も多い。例えばCMでも有名なNaviTimeはiPhone市場撤退し、かわりにエクスペリエンスに優れる「駅探」の方が評価された。同じくビッグネームmixiアプリもかなり低い評価に甘んじている状況だ。
3. 初期ユーザー発のポジティブ・フィードバック: iPhoneアーリーアダプター層=Blogで意見を発信したり、iTunes Storeに(Amazonのような)レビューを積極的に書く層に評価を受ける事により、ネット検索でiPhone国語辞書では「大辞林」が上位に登場するし、しかも評価は高い。またiTunes Storeの辞書アプリランキングでは1位、ゲームも含む総合ランキングでも8位となる(本エントリ執筆時点)。
そうなってくると、新規ユーザーは検索結果やランキングなどから判断して、辞書アプリ購入時はまず大辞林 – そしてその行動が順位を上げ…という正のフィードバックとなっていく。この辺りは新しいマーケティングの理屈AISAS理論を思い起こさせる。高評価をするという“感情”をもってもらい、それを共有してもらうことで正のフィードバックを回すには感情に訴える体験が必要不可欠だったのだと考えている。
今回の話は、特にユーザーエクスペリエンスを重要視するiPhoneだったので顕著だったのだろうが、欲しいものは検索で探す、他の人の意見/評価記事を参考にする、そして気に入ったモノについては自分も評価を共有するというネット時代は(AISASの事も考えれば)ソフトに限らず、ユーザー側の所有する喜び・満足度を上げるという事が必要になってくると考えられる。ともすれば特許を持っている、機能的に他者よりも良いという点が取り上げられやすい(そして文章化しやすい)が、実際にはエクスペリエンスの重要性/強みというものをより意識した方が良い。
そして、自分にとってはエクスペリエンスを理解してもらえる、説得できる語彙…単に「使いやすい」とか「初心者でも簡単」以上のものを多くの方々に納得してもらうために必要になってきていると考える次第。久しぶりにかなり長いエントリを書いた。最後までつきあってくれた方、ありがとうございます。
[参考記事]
現在助走期間中のクリエイティブ・ディレクター/Webデザイナー。このBlogは期間限定で、仕事のことをはじめ、さまざまな考えていること、日々行っていること等を紹介します。どうぞよろしくお願いします。
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